今回レビューする製品は、CPUにインテル 第12世代 Alder Lake-N N95を搭載のミニPC「Beelink Mini S12」。レビューするメモリ 8GB / PCIe SSD 256GBの場合、2023年3月11日現在の通販価格は3万円前後とエントリークラスの価格帯であるものの、ベンチマークスコアはインテル 第7世代のCore i5-7300U相当となり、キビキビと動作します。
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目次
Beelink Mini S12のスペック
スペックについては、以下の記事で掲載の事項の再掲載です。Alder Lake-N N95を搭載していることが最大の特徴ですが、このクラスでPCIe SSDを標準装備していることも特徴の一つ。なお、上の下の画像中央に縦に伸びたものがありますが、これはゴムの滑り止めと底板を外す際に使用するものでした。
Beelink Mini S12 / 12 Pro、Alder Lake-N N95 / N100搭載 ミニPCのスペック。N5105より約20% パフォーマンスアップ
CPU | Alder Lake N95、4コア4スレッド、最大 3.4GHz |
GPU | Intel UHD Graphics 1.2GGHz(16EUs) |
メモリ | 8GB or 16GB DDR4、スロットは1つのみ |
ストレージ | M.2 PCIe SSD 128GB / 256GB / 512GB、2.5インチ HDD / SSDを増設可能 |
WiFi | 11 b/g/n/ac |
Bluetooth | 4.2 |
ポート類 | USB 3.2 x 4、HDMI x 2、有線LAN |
サイズ | 115 x 102 x 39mm |
OS | Windows 11 Pro |
スペック上の留意事項としては、以下の記事にて実機レビューの「Mini S(Jasper Lake N5095を搭載)」と同様に、メモリスロットは一つのみ。このため、後付けでメモリ 16GBとする場合には、8GBを外して取り付ける必要があります。デュアルチャネルとはなりません。

▼メモリは大手ブランドのCrucialの製品を搭載と明記されています。
▼M.2 SSDスロットは PCIe / SATAの双方に対応しています。
実機のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報を記載します。
▼Windows 11 Proの設定より。もちろん、仕様どおりにCPUはAlder Lake-N N95、メモリは8GB。
▼フリーソフト「HWiNFO(ソフトの記事はこちら)」から抽出のシステム情報(クリックで拡大できます)。
▼メモリは安心のCrucial製。Beelinkの場合、上位機ではCrucialのメモリを搭載する傾向ですが、本製品も同様でした。
▲▼部品番号に「CT8G4SFS832A.M8FR」とあります。本製品のメモリスロットは一つのみですが、16GBに換装する場合には、以下の製品です(Crucialの事例)。
▲▼スペックにあるBluetoothのバージョンが低いように感じたのですが、実機で確認してみると仕様どおりに 4.2でした。バージョンの確認方法は以下の記事を参照。

開封、外観
開封と外観について記載します。取り出して最初に感じたのが、本体が軽いこと。上位機はスチール製のことも多く、この場合にはズッシリとしたものです。一方、本製品は樹脂製、かつ一般的なミニPCよりも一回りコンパクトなこともあり、軽さが際立ちます。
開封
▼コンパクトな本体にあわせて、外箱も213 x 127 x 54mmとコンパクトです。
▼内箱はBeelinkの他のミニPCと同様にシンプルなもの。
▼右側には電源、HDMIコードなどの付属品が収納されています。
▼本体は傷つき防止のために保護されています。
▼本体を取り出した状況。
▼天板は完全に艶消しではなく、光沢まじりです。指紋や油脂は目立ちにくいですが、多少は付着します。
▼BeelinkのミニPCの場合、全製品に共通ではありませんが、黄色の注意事項のシールが貼り付けられている製品もあります。「初期設定中に、マイクロソフトアカウントにログインしたくない場合には、WiFiやLANに接続しないように」との注意書きです。
▼付属品は日本仕様のACアダプター、VESA マウント、2.5インチ SSD / HDD取付用のネジ、HDMIケーブル 2個に簡易説明書。説明書は7ヵ国語構成で、うち日本語は5ページ分。ポート類の説明や メモリの換装方法の記載があります。
▼コンパクトなACアダプター。
▼PCを多くレビューしていると、どのACアダプターかわからなくなるため、私の備忘録も含めて アダプターの仕様部分の拡大です。
外観
外観の全般的なところでは、本製品はエントリー機の位置付けでもあり、上位機と比較すると樹脂製であることが一目でわかります。ただし、樹脂製の上位機と同様の質感であり、この価格帯としては十分です。
▼上位機は 電源オンにて電源ボタンの白い部分が点灯する仕様ですが、本製品は点灯せず、2つめの写真のように 電源ボタンの左のLEDがブルーに点灯します。前面のポート類は、USB 3.2 x 2個とイヤホンジャックです。
▼左右の両サイドは、同デザインの通風口のみ。
▼背面のポート類は、 USB 3.2 x 2個とHDMI x 2個。USB Type-Cは未搭載です。上の通風口から内部の熱が排出されますが、ファンは低回転であり、通風口に手を当てると排出されていることがわかる程度の風量です。
▼底面は模様なしのフラットでもあり、油脂は付着しやすいです。底板を取り外す際には、四隅のネジを外します。ミニPCのなかには、ゴム足を剥がすとネジが露出する製品も多いのですが、この場合には、一度ゴムを剥がすと粘着が弱くなります。
▲▼イメージ画像を見た際、「この垂直の部分は何だろう」と思っていたのですが、ゴム製の滑り止めでした。この滑り止めの恩恵もあり、机などで滑りが軽減されます。また、底板を外す際に、こちらを引っ張って外すと簡単です。
▼天板の模様がわかる角度から撮影。Beelinkのロゴの部分は透明樹脂です。
▲▼下の写真は Jasper Lake N5095を搭載の「Mini S」ですが、Mini Sの無地の天板よりも上質に見えます。
一般的なミニPCとのサイズ比較
製品名に「Mini」とあるとおり、コンパクトなことも特徴の一つですので、一般的なサイズのミニPC「Beelink SEi8」とのサイズを比較してみました。

▼仕様上のサイズは、SEi8の124 x 113 x 41mmに対して、S12は115 x 102 x 39mmであり、縦横ともに約1cm コンパクト。角の丸みがあるために、約1cmの相違には見えませんが、コンパクトであることに間違いはありません。
なお、SEi8はCPUにCore i5-8279Uを搭載し、SE12よりも上位のミニPCですが、双方ともにボディは樹脂製。スペックと同様に価格差も大きいですが、質感的には同様です。
内部の構成
メモリ、SSDなどの内部の構成について記載します。
▼四隅のネジを外し、右上のゴムを引っ張ると底板が外れます。
▼左(底板の裏)に、増設の2.5インチ HDD / SSDの冷却・PCIe SSDの冷却のためのアルミシールドが備わっています。メモリはCrucial製ですが、PCIe SSDを取り外してみても ブランドを確認できず。
▼左上の熱伝導テープは、PCIe SSDの熱をアルミシールドに逃す仕様。電源オフにした直後に底板を開けたのですが、アルミシールド全体に温もりがありました。
▼マザーボード側の全体像。左下にあるのは WiFi チップ。裏面にあるヒートシンクの構造も確認したいのですが、マザーボードを取り外すとはめ込みが難しいためにやめておきます。
ベンチマークスコア
続いて、実機で計測のベンチマークスコアです。Geekbenchについては以下の記事でも掲載していますが、エントリークラスのミニPCやノートPCに搭載されることの多い Jasper Lake N5095 / N5100 / N5105が Core i5-5300U相当であるのに対して、Alder Lake-N N95 / N100は Core i5-7300U相当。インテルの世代では 2世代分ほど ジャンプアップしたイメージです。

▼GeekbenchのCPUベンチマークスコア。
上から順に「Beelink S12」でのGeekbench 6 / Geekbench 5、比較対象用のJasper Lake N5095を搭載の「Beelink Mini S」。Mini Sは N5095搭載機のなかでも やや低いスコアとなるのですが、シングルコアの比較において N95はN5095よりも約41%も高いスコアです。
▼CINEBENCH R23のスコアは「シングルコア 851、マルチコア 1739」。マルチコアは低いですが、シングルコアがCore i7-4850HQより高く、3万円前後のPCでもあり十分です。
▼256GB M.2 PCIe SSDのスコア。Read / Writeともに800MB/s台と控えめですが、この価格帯でPCIe SSDを搭載していることはありがたい。
▼自宅の光回線(Nuro 光)は速くないのですが、他のPCやスマホと同程度の回線速度です。
体感レスポンス
使い始め当初は、Jasper Lake N5095 / N5100と同水準のレスポンスと感じたものの、使い込んでいるうちに Alder Lake-N N95のキビキビとしたレスポンスを体感できます。
- Jasper Lakeも同様ですが、Gemini Lake N4100 / J4125あたりと比較すると、レスポンスの相違は確実に体感できます。
- 当記事はMini S12を使用し編集していますが、画像編集などのライトユースでもキビキビとした動きを実感できます。
- ベンチマークスコアと同様に、レスポンスとしては インテル 第7世代のCore i5-7300U相当。こちらの記事でレビューの富士通 LIFEBOOOK U937/Rと同水準の体感レスポンスです。
- ライトユースの場合、Core i5-5300Uあたりと比較すると、大きな相違ではありませんが、ややキビキビ感が増している感覚です。
全般的には、データ量や関数が余程多くない ExceclやAccessでの在宅勤務では十分なレスポンスです。現時点では遭遇していませんが、Windowsの更新時(セキュリティアップデートも含む)のシステムプロセスが動作している際にどれほどレスポンスが悪化するかが、ポイントの一つ。 Core i5-7300U相当ですので、極端な悪化を感じないだろうと思われます。
CPU温度、静音性
以下の画像はフリーソフト「HWiNFO」で計測のCPU温度ですが、CINEBENCH R23 ベンチマークで負荷をかけた際の温度は 最大 85℃。やや高いですが、これほど負荷をかけることもないので、私としては許容範囲。なお、ボディはベンチ計測時に多少温もりを感じる程度です。
静音性については、以下の記事で実機レビューの「Beelink Mini S / U59 Pro」と異なり、「ほぼ無音」で言えるほどではないのですが、十分に静音です。常時ではないものの、ほとんど気にならないほどの微かな音量で CPUファンが回転しています。


なお、以下のフリーソフト「FacCtrl」にて、ファンの回転数の制御ができることを確認済です。ただし、静音型のPCであるため、調整すると逆にファン音量が大きくなるため注意しましょう。

まとめ
2023年3月11日現在、Jasper Lake N5095を搭載の「Beelink Mini S」との価格差(Amazon)は 約6,000円ですが、Mini S12とのベンチマークスコアの相違(Core i5-5300U相当 vs Core i5-7300U相当)、SSDの相違(SATA vs PCIe)を考慮すると、Mini S12のコスパが優れています。今後、エントリークラスのミニPCやノートPCでは、Alder Lake-N N95 / N100がメインとなること間違いなしです。