今回レビューする製品は、CPUにCore i5-1130G7を搭載するUMPC「One-Netbook A1 Pro」。2020年11月に無印の「A1」を実機レビューしましたが、CPUはCore m3-8100Yから大幅にスペースアップし、USB4を搭載していることが、Pro版の大きなポイントです。
全般的に、液晶は明るく色合いや視野角も良好、他の7インチのUMPCよりもキーボードはタイピングしやすいです。一方、UMPCとしてはハイエンドのCPUを搭載していることもあり、ファンの音量は大きいです。
なお、当記事には One-Netbookさんよりお借りした「A1 Pro」に基づくものです。
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One-Netbook A1 Proのスペック
「One-Netbook A1 Pro」のスペックは以下となります。
CPU | Core i5-1130G7、4コア 8スレッド、最大 4.0GHz |
メモリ | 8GB / 16GB LPDDR4x |
ストレージ | 512GB PCIe SSD |
ディスプレイ | 7インチ、IPS、タッチパネル、解像度 1920 x 1200 |
WiFi | WiFi6対応 |
Bluetooth | 5.0 |
ポート類 | USB 3.0 x 2、USB Type-C(4.0 フル機能)、Micro HDMI、RS-232 シリアルポート、有線LAN |
バッテリー容量 | 6000mAh / 3.7V |
サイズ(本体) | 173 x 136 × 19 mm、550kg |
OS | Windows 11 Home |
その他 | バックライト付きキーボード、トラックポイント、指紋認証 |
▲▼従来版の「One-Netbook A1 」は、2020年11月に以下の記事にて実機レビューしています。上表では、変更となった事項に黄色網掛けしています。

以降は従来版の「A1」に共通する事項ですが、あらためて特徴を記載します。
▼一般的な Yoga スタイルのUMPCと異なり、ディスプレイは左に回転します。Amazonなどのレビューでは、回転軸が強度の弱いとのコメントが散見され、強く・勢いよく回転させないなどの注意も必要です。
▼産業用としても使用可能と明記しおり、RS-232 シリアルポートを装備しています。これにより、モデム・バーコード機器などの接続が可能です。また、「A1 Pro」では USB4も装備しています。
▼UMPCでありつつも、75 x 75mmのVESAにも対応しています。
▼私にとっては唯一とも言える懸念事項は、冷却対応とファンの音量。コンパクトなボディにハイエンドのスペックであり、ファンの音量はかなりのもの。後述していますが、この音量を許容できるか否かが大きなポイント。
実機のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報を記載します。
▼Windows 11 「設定」のシステム情報。インテル 第11世代 Core i5-1130G7、メモリ 16GB、OSは Windows 11 Home
▼こちらはフリーソフト「HWiNFO(HWiNFO、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフトの概要)」から抽出のシステム情報。クリックで拡大できます。
▼メモリ は LPDDR4 16GB、デュアルチャネルでの動作です。
開封、外観
続いて開封、外観について記載します。One-NetbookのUMPCは、UMPCとしてはハイエンドの構成に、金属製の質感の高い筐体であることが大きな特徴ですが、「A1 Pro」にも当てはまります。
艶消しブラックのに塊感のあるボディは、無印の「A1」をお借りした時から 2年半経過した今見ても、相変わらずよいものです。
開封
▼One-netbookの製品レビューは 今回で3台目となりますが、外箱も豪華です。
▼付属品は、簡易的な説明書、充電用のUSB Type-C ケーブルとACアダプター。
▼USB Type-C to Type-CのケーブルとACアダプターを拡大。
▼艶消しブラックのボディ色は重厚感があるように見えますが、約550gと軽量です。私にとっては、このギャップも魅力も感じます。なお、天板、底板ともに、油脂はやや付着しやすいです。
▼斜め後方からですが、回転式のヒンジの構成、ポート類の構成もあり、一般的なUMPCよりも厚みがあります。なお、上の写真とこちらの写真は、ヒンジ側の保護フィルムを装着したままのため、ツートンのように見えています。
▼ヒンジ側のポート類。通風口もあり、スペース的な余裕がないのですが、Micro HDMIではなく、Mini HDMIだと更によかったように思います。Micro HDMIの場合には、ケーブルあるいはHDMI 変換アダプターに負荷がかかってしまい、先端が簡単に折れてしまいます。
▼ポート部分を拡大。ディスプレイを回転させています。
▼Micro HDMI to HDMI アダプターを装着した様子。Micro HDMIとHDMIのサイズ差は大きいことにより、Micro HDMIのオス側が折れやすいために要注意です。私は他のPCで、3回ほど折ってしまったことがあります。
▲▼先端が折れてしまった「HDMI to Micro HDMI 変換アダプター」の事例。

▼実機は写真よりも濃いブラックですが、金属製の筐体は質感の高いもの。
▼USB4ポートは左サイドに配置されています。拡大してみても、エッジの丸みなど丁寧な作り込みです。
▼右サイドには、カードスロットとイヤホンジャックがあります。
▲右下にファンのアイコンのキーがありますが、Fn + ファンキーにより、ファンの全開モード・通常モードを切り替えることができます。
▼キーボードの一部を拡大。7インチのため、主要キーのキーピッチは15mmと狭いことは止むを得ず。
▼UMPCを操作するのは今回で7台目ですが、共通して便利な機能がトラックポイント。A1 Proも含めて、スムーズに操作できます。
▼照明を消灯して撮影していますが、バックライトはかなり明るいです。
▼背面も、VESA マウント取付用のネジ穴も含めて 質感高いです。
ディスプレイ
FHD、タッチパネル、IPSのディスプレイですが、明るさ・色合い・視野角ともに よいディスプレイです。これまで、7インチとしては GPD Pocket / One Mix 2S / ドンキ Nanote / A1 従来モデルの操作の経験がありますが、トップクラスの液晶です。
▼180度回転させてみました。ディスプレイは左回転となり、右には回転しないために注意が必要です。
▼ディスプレイを最大限開いた様子。
▼この角度から見ても、視野角、色合いともに大きな変化がなく、よい液晶です。なお、タッチパネルの精度も良好。小さな液晶ですので、小さな文字のリンク先のタッチは行いづらいものの、Web サイトの縦スクロールなどでは極めて便利です。
▼グレアパネルですが、ギラツキ・映り込みも程よく抑えられているように感じます。
キーボードのタイピング感
過去に一時的に操作した 7インチのUMPC「GPD Pocket 初代」、「One Mix 2S」、手元にある「ドンキ Nanote」と比較するとタイピングしやすいもの。ただし、以下のとおり、やはり7インチでは無理があり、メールの返信など、短文での使い方をメインとした方が無難です。
- 15mmのキータッチでは無理があり、手が大きくない私でも窮屈なタイピングです。
- キーの配置や一部のキーのサイズなど、他の7インチ UMPCと比較すると よく考慮されています。ただし、DelキーやBackキーの配置など、やはり無理があり、誤タイピングを誘発しやすいです。
全般的に、UMPCで快適タイピングを望む場合には、以下の8インチクラスがよいです。
- CHUWI MiniBook、実機キーボードの使用感。一部の変則キーを除いては意外と快適、高速タイピングも可能
- MiniBookと同一ボディの「FFF 8インチ UMPC」。MiniBook 1年半の利用からメリットを整理してみた
ベンチマークスコア
Windows 11の頻繁なアップデートで負荷がかり、CPUの発熱が大きな状況でしたので、今回は以下の画像のとおり、Windowsの更新を止めたうえで、ベンチマークを計測しました。

▼Geekbench 5のスコアは「シングルコア 1250、マルチコア 2349」。マルチコアのスコアは高くはないですが、シングルコアのスコアは妥当なところ。
▲下のスコアは、Windows 11 更新のシステムプロセスが動作中に計測したもの。初回の計測から5回ほどは、この水準の低いスコアが続いたため、Windows 11の更新が落ち着いた後、上述のとおり、Windows 11の更新を停止。停止後は、最初の画像の本来あるべきスコアで安定。
▲▼Geekbench 6のスコアは「シングルコア 1619、マルチコア 3070」。以下の記事に記載のとおり、Geekbench 6のスコアは 5よりも高くなります。

▼「CINEBENCH R23」のスコアは「シングルコア 2023、マルチコア 1038」
▼PCIe SSDのベンチスコアは「Read 1738MB/s、Write 1187MB/s」。PCIe SSDとしては控えめなスコアですが、発熱を考慮し 抑えているように思います。
体感レスポンス
上記のベンチマークスコア水準以上の体感レスポンスとなると、概ねどのPCも同じコメントとなりますが、「A1 Pro」の普段使いでの体感レスポンスは以下です。
なお、私は快適に操作するため、外付けモニターに接続し、キーボードも外付けキーボードを使用しています。
- Web サイトのブラウジング、解像度の高くない一般的な動画視聴、画像編集などの普段使いでは、キビキビと動作します。
- ただし、Windowsの起動においては他のPCよりも多少の時間を要し(プラス 10~20秒程度)、起動プロセスの一部の画面が乱れるような現象もあります。
ファン音量、発熱
7インチの小さなボディにCore i5-1130G7を搭載していますので、課題となるのが CPUの発熱への対応とファン音量。軽作業時に時々 静音となることもありますが、多くの時間は大きな音量でファンが回転しています。
負荷に応じて数段階でのファン回転数となり、ファンの音量は変動しますが、総じてファン音量は大きいです。このため、外出先での静かな公共の場での使用は制限されます。自室内で使用していても、ファン音量が気になり、極端に言えば、本製品の電源を切るとホッとするほど。また、キーボードの左上に、かなりの熱を帯びます。
▼こちらの画像では、コア温度の最大は 90℃、サーマルスロットリンク(CPUが最大温度に達した場合、保護のために消費電力を制限して温度を下げる、あるいは自動シャットダウン)が発動しています。また、コア温度が95℃になったことがあります。
ただし、「Fnキー + ファンキー(キーボードの右上にあり)」の押下により、ファンを常時全開にすることができ、サーマルスロットリングの発生を回避することができます。
▼こちらは iPhone アプリ「デジベル X」にて、簡易的に計測のファン音。通常事には 30dB台後半、負荷がかかっている際には 40dB台後半です。特に負荷事には大きな音量ですが、気になる方は同アプリをインストールし、周囲の騒音と比較してみてください。なお、PCを操作せず、ディスプレイのみ点灯している場合には、CPUファンが回転しないことも多いです。
スピーカー、指紋認証、その他
スピーカーの音質、指紋認証、その他の気付き事項など、ポイントのみ記載します。
- スピーカーの音質は若干こもりがちではあるものの、一般的なノートPCと比較すると よい音質です。また、小さなボディながらも音量も十分。
- Windows PCの指紋認証は、製品による当たり外れがほぼないのですが、本製品の指紋認証も確実に反応します。
- フル機能・映像出力対応のUSB4ですが、手元にあるPD対応のディスプレイでは映像出力できず。
- トラックポイントは他のUMPCと同様に扱いやすく、利便性の高いもの。滑らかに動作します。
まとめ
あらためて、「One-Netbook A1 Pro」の外観・使用感のポイントを記載すると以下となります。全般的には、7インチの小さなボディに UMPCとしてはハイエンドなスペックのため、どうしてもファンの音量は大きくなり、これを許容する必要もあります(ただし、7インチのUMPCは、下位の製品も含めて ファン音は大きいです)。
また、キーボードも小さいために、普段は ミニPCライクに外部ディスプレイとキーボードを接続して使用し、必要に応じて持ち運ぶとの使い方になろうかと思います。
- A1の実機レビューから2年半を経過しましたが、今見てもデザイン・質感の高さは特筆すべきもの。
- ディスプレイの明るさ・色合い・視野角ともに良好。よいディスプレイです。
- Core i5-1130G7の搭載により、キビキビと動作。快適動作のため、外付けディスプレイとキーボードの接続により、ハイエンドなミニPCライクな使い方もできます。
- 7インチのために快適なタイピングは望めないものの、私が過去に操作した 7インチ UMPCとの対比では、キーの配置などの違和感は少なからず抑制されています。
- スピーカーの音質・音量、指紋認証の精度も良好。
- マイナスポイントとしては、ファンの大きな音量とキーボード左上に相応の熱を帯びること。購入検討時には、これを前提とする必要があります。
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