今回レビューする製品は、CPUにAlder Lake N95を搭載するミニPC「NVISEN AU01」。同CPUを搭載するミニPCは複数のブランドから販売されていますが、「NVISEN AU01」の特徴は、M.2 SSD ポートを2つ装備していること。標準装備は、2242サイズのM.2 SATA SSDですが、2280サイズのPCIe M.2 SSDを増設することができます。
Alder Lake N95 / N100を搭載するPCのレビューは、今回で3製品目となりますが、エントリークラスの価格にして、パフォーマンスはミドルレンジクラス。インテル 第8世代 モバイル向けのCore i3 / i5の中間あたりの実力です。
レビューする製品はこちら 文末のクーポン利用により 239.99ドルとなります(5/31まで)。なお、本記事は Banggoodさんからレビュー用にサンプル提供いただいた製品に基づくものです。
NVISEN AU01のスペック
サイズは一般的なミニPCよりも一回りコンパクト。その他の多くのミニPCと異なり、2.5インチ HDD / SSDを増設できませんが、冒頭に記載のとおり、M.2 SSD ポートを2つ備えていることが大きな特徴です。
CPU | Alder Lake N95、4コア4スレッド、最大 3.4GHz |
GPU | Intel UHD Graphics 1.2GGHz(16EUs) |
メモリ | 8GB DDR4、最大 32GB、スロットは1つのみ |
ストレージ | M.2 SATA SSD 512GB、2280 サイズ M.2 PCIe SSDを増設可能 |
WiFi | 11 b/g/n/ac |
Bluetooth | 4.2 |
ポート類 | USB 3.0 x 4、HDMI x 2、有線LAN |
サイズ | 114 x 106 x 42.5mm |
OS | Windows 11 Pro |
▼ファン音量・CPU温度のデータが公開されています。省電力のAlder Lake-Nですので、負荷をかけても ファン音は ほぼ聞こえず、私の実測では ベンチマークソフトで負荷をかけた際のCPUの最大温度は 79℃。
▼ポート類は USB 3.0 x 4、HDMI x 2、有線LANと、このクラスのミニPCの一般的な構成です。
▲画像では 前面のUSB ポートは 2.0(白)ですが、実機では 3.0です。
実機のシステム情報
続いて、実機から抽出のシステム情報を記載します。
▼Windows 11 「設定」のシステム情報。もちろん、仕様どおりにCPUは Alder Lake N95、メモリ 8GB。OSはWindows 11 Proですが、サンプル提供品のためか、あるいは出荷時にインストールしているのか、Windows 11 英語版の初期設定済でした。私は初回起動直後に日本語化しています。
▼フリーソフト「HWiNFO(HWiNFO、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフトの概要)」で確認のシステム情報。クリックで拡大できます。
メモリは 1スロットのため、シングルチャネルでの動作(1333.3 MHz、DDR4-2666 / PC4-21300)。512GBのSSDは M.2 2242サイズ、LuminouTekの製品とあります。私は「LuminouTek」なるブランドを知らなかったのですが、B to B向けにAlibaba サイトで販売されています。
▼512GBのSSDは、145GBのWindows 11領域とそれ以外にパーティションが切られています。パーティションなしがよい方も多いと思われます。
開封、外観
開封、付属品、外観について記載します。外観においては、デザイン、質感ともに一般的なエントリークラスのミニPCの構成です。他のミニPCも同様ですが、初めてミニPCを手にした方は、その軽さに驚くことと思います。
開封
▼輸送時に箱が少し潰れてしまったようです。NVISEN ブランドの製品は、私が知る範囲ではOEM製品の販売であるため、外箱は汎用の物かと思います。
▼コンパクトなミニPCに対して大きめの外箱ですが、厚い梱包材で保護されています。
▼こちらの内箱に付属品が収まっています。
▼付属品は、左から英語・中国語表記の簡易的な説明書、EUプラグのACアダプター、HDMIケーブル、VESA ブラケット、ブラケット取付・壁掛用のネジ。
▼コンパクトなACアダプターのサイズ感がわかるよう、マウスと並べて撮影。白のEUプラグ to 日本プラグの変換アダプターは、Banggooのサービスです。
▼ACアダプターの仕様を拡大。
外観
全面樹脂製で、一般的なデザイン・質感の外観です。
▼写真ではわかりませんが、天板中央のロゴはプリントではなく立体感があります。写真ではやや明るいブラックに見えていますが、実機は写真よりも濃い つや消しブラックです。ブラックの場合には、油脂や指紋が目立ちやすいのですが、本製品では油脂などの付着は それほど目につくことはありません。
▼左右サイドは通風孔のみ。CPU温度が高くないため、通風孔から熱風が激しく出てくることもありません。
▼前面は USB 3.0 x 2個と電源ボタン。CMOS クリアのリセットホールは備えていません。
▼電源オン時には、以下の写真のようにブルーのLEDが点灯します。
▼背面は左から、イヤホンジャック、HDMI、有線LAN、USB 3.0 x 2、HDMI。USB Type-Cは未装備ですが、このクラスとしては標準的な構成です。
▼私は当初、本製品は、同じくN95を搭載しコンパクトな「Beelink Mini S」と同一製造元の派生モデルと思っていたのですが、サイズ的には近いものの別物のミニPCでした。

内部の構成、PCIe SSDの増設
底板を開き、2280サイズのM.2 PCIe SSDを増設してみました。底板を外すと、簡単にメモリと2242サイズのM.2 SSDの換装、2280サイズのM.2 PCIe SSDの増設を行うことができます。
▼底板を外すため、四隅のネジを外します。
▼底板は簡単には外せないため、付属のVESA ブラケットを一時的に取り付けて外しました。
▼樹脂製の底板の裏には、2.5インチ HDD / SSD取付用のホルダーがありますが、マザーボードのぱっと見では、接続ポートはありません(仕様どおりに、2.5インチ SATA HDD / SSDを装着できません)。
▼マザーボードの全体像。中央が標準装備の2242サイズ SATAのM.2 SSD。左上に、2280サイズ M.2 PCIe SSD接続ポートがあります。
▲左下にあるのは WiFi チップ。
▼メモリは2ポートの淡い期待を抱いていたのですが、やはり 1ポートです。
▼いきなりですが、M.2 PCIe SSDの取付後。一時的な取付のため、冷却対応を行っていませんが、こちら(Amazon)のヒートシンクを取り付けるなどの対応が必要です。

▲▼取り付けたM.2 PCIe SSDは、上の記事にて実機レビューの「Beelink SEi8」に搭載の物を一時的に流用。2つめの画像はオリジナルの上記PCで計測したものですが、冷却対応や設定が適切でなかったのか、本製品での接続が本来の実力です。
ベンチマークスコア
Geekbench 5 / 6、CINEBENCH R23、CrystalDiskMarkのベンチマークスコアを掲載します。なお、比較対象は、以下の記事で実機レビューの、Alder Lake N95を搭載の「Beelink S12」、N100を搭載の「Beelink EQ12」です。


Geekbench 5
Geekbench 5のスコアは「シングルコア 909、マルチコア 2312」。2つめのN95の「Beelink S12」と同水準、N100の「Beelink EQ12」との比較では妥当なスコアです。
▲▼なお、以下の記事に、これまで計測した Geekbench 5のスコアを掲載していますが、N95のシングルコアのスコアは、インテル 第8世代の Core i3-8130Uより高く、Core i5- 8279U あるいは 第10世代 Core i3-10110Uの中間あたり。エントリークラスの価格帯のPCとしては十分です。

Geekbench 6
以下の記事にも掲載していますが、Geekbench 5と6では、スコア算出のベースとなるPCが異なり、Geekbench 6のシングルコアのスコアは Geekbench 5の3割増程度になります。本製品のスコアは「シングルコア 1114、マルチコア 2553」。
▼2つめのスコアは、同じくN95を搭載の「Beelink S12」。
CINEBENCH R23
CINEBENCH R23のスコアは「シングルコア 831、マルチコア 2374」。
▲マルチコアのスコアはランキング 最下位でやむを得ないのですが、シングルコアではインテル 第4世代 モバイル向け ハイエンドの Core i7-4850HQよりも高いスコアです。
CrystalDiskMark
本製品のM.2 SSDは 2242サイズのSATA接続。読み書きともに、一般的な SATA SSDのスコアです。なお、BeelinkのミニPCなど、N95 / N100の製品では PCIe SSDを標準装備しているものも多いのですが、読み書き800MB/s程度となり、本製品と体感できる相違はありません。
体感レスポンス
エントリークラスの価格のPCのため、つい Gemini Lake / Jasper Lakeのモバイル向け Celeron クラスの先入観でとらえてしまうのですが、ゲームや動画編集を行わない限りは、Alder Lake N95 あるいはN100で十分に快適です。
- Jasper Lake N5105 / N5100あたりと比較すると、ワンランク上の快適さがあります。特に、N95では、Windows 更新前後のレスポンスの悪化をそれほど感じません。
- ベンチマークスコアと同様に、体感レスポンスとしても インテル 第8世代の Core i3-8130Uと 第10世代 Core i3-10110Uの中間あたり。普段使いではキビキビと動作します。
- AMD Ryzen 5番台(事例としては、こちらでレビューの AMD Ryzen 7 5800HのPC)のPCと比較すると、普段使いでのキビキビ感は 僅かに劣るか、劣らないか程度。
- 標準装備のSSDはSATAですが、こちらも普段使いでは十分なもの。800MB/sレベルのPCIe SSDとは、おおきな体感差はありません。
CPU温度、静音性
省電力のAlder Lake N95ですので、他のPCと同様にCPU温度は PCに負荷をかけても それほど高くなく、また、ファンの音量も小さいもの。
▼こちらは前述のフリーソフト「HWiNFO」で計測のCPU温度ですが、ベンチマークで負荷をかけた際にも CPU温度は最大 79℃と抑えられています。
▼こちらは iPhone アプリ「デジベル X」で計測のファン音量。負荷をかけた際には、瞬間的に43dB、平均は36dBと 全く気にならない程度の音量です。また、通常時には30dB前後と 本体に耳を近づけて ようやくファンが動作していることがわかる程度。
参考、日本語キーボードへのレイアウト変更方法
中国ブランドも含め、海外製のミニPC・PCでは、通常の場合、Windows 11 英語版がプレインストールされています。初期設定で日本語を選んだ場合にも英語キーボードの設定になっているため、@の位置など、日本キーボードとは異なる配置となっています。これを初期不良と勘違いする方もいらっしゃるのですが、以下の記事に記載の方法で、簡単に日本語キーボードのレイアウトへと変更することができます。

▼なお、こちらは私のおすすめのWindows 11の初期設定です。

まとめ
他の Alder Lake N95 / N100を搭載するミニPCと比較すると、M.2 SSD ポートを2つ装備することが大きなメリットの「NVISEN AU01」。標準装備の2242サイズ M.2 SATA SSDは流通量が多くないため、他のノートPCなどに流用し、本製品では 空きポートで 高速なPCIe SSDを使用(OS クローンで対応。こちらの記事を参照)する手段もあります。
あらためて、本製品のポイントを記載すると以下となります。
- 一般的なミニPCと比較すると、縦横ともに 約1cm コンパクトな筐体。
- 全樹脂製の筐体ですが、デザインと質感は標準的。
- 標準装備の2242サイズ M.2 SATA SSDのほか、M.2 PCIe SSDの空きポートがあることが 大きなメリット。底板を開いて簡単に増設可能。
- 一方、メモリは 1スロットのみ。
- Alder Lake N95のベンチマークスコア・体感レスポンスは、インテル 第8世代 モバイル向けのCore i3 / Core i5に近い水準。
▼Banggoodの販売情報。画像の価格は 247.99ドルですが、クーポンコード「BG710274」の利用により 239.99ドルとなります。クーポンは5/31まで有効。