今回レビューする製品は、Web カメラとマイク、デュアルスピーカーを内蔵するミニPC「MINISIFORUM MC560」です。ミニPCらしからぬデザインで、CPUにAMD Ryzen 5 5625U、メモリ 16GB(32GB版もあり)、PCIe SSD 512GBと基本スペックも高いです。
開封して驚いたのが、縦置きなこともあり想像以上にコンパクトなこと。内蔵スピーカーも 動画の声を聞き取りやすく、Web カメラやスピーカーフォンなどの追加コストなく、オンライン会議などで活用することができます。
また、USB PD / Alt モード対応となり、PD対応のモニターでは ケーブル1本で MC560に給電・モニターへ映像出力することができ、安定動作しています。
レビューする製品はこちら
MINISFORUM MX560のスペック
「MINISFORUM MC560」のスペックは以下の記事にも掲載していますが、レビューする実機のスペックを記載します。レビュー機は メモリ 16GB / PCIe SSD 512GB版ですが、メモリ 32GB / PCIe SSD 512GB版も販売されています。
MINISFORUM MC560、AMD Ryzen 5 5625U、Web カメラ、デュアルスピーカー搭載のミニPCが販売開始。同CPU搭載・人気のUM560よりも割安
CPU | AMD Ryzen 5 5625U、6コア12スレッド |
GPU | Radeon RX Vega 7 |
メモリ | DDR4-3200 16GB (8GB x 2)、最大 64GB |
ストレージ | M.2 PCIe 3.0 512GB |
WiFi | WiFi 6e |
Bluetooth | 5.2 |
ポート類 | HDMI 、USB Type-C(Alt DP、PD対応)、USB-A 3.2 x 2、有線LAN |
サイズ | 4.2 × 2.7 ×6.0インチ(10.67 x 6.86 x 15.24cm) |
OS | Windows 11 Pro |
その他 | QHD 2.5K 解像度 Web Camera、デュアルスピーカー(3W x 2)、デュアルマイク、設置面は10°の傾斜あり |
▼CPUには、GaN 電源アダプターが付属することで人気の「UM560」にも掲載の、AMD Ryzen 5 5625Uを搭載しています。

▼基本スペックも Ryzen 5 5625U / メモリ 16GBと高いうえに、最大の特徴はコンパクトな筐体に Web カメラとデュアルスピーカーを内蔵していること。在宅勤務などでのオンライン会議では、追加オプションなしに そのまま利用することができます。
一方、WEb カメラを内蔵していることもあり、ユーザーで外枠を外し、メモリ・SSDを換装することができません。
▼5,000円前後で販売されている 一般的な外付け Web カメラはHD1080P画質の製品が多いなか、QHD 2.5K 解像度 @ 30Hz、広視野角 93.8°のWeb カメラを搭載しています。
実機のシステム情報
続いて実機から抽出のシステム情報を掲載します。
▼Windows 11の「設定」から抽出のシステム情報。もちろん、製品情報どおりの、AMD Ryzen 5 5625U、メモリ 16GB。OSは Windows 11 Pro
▼こちらはフリーソフト「HWiNFO(HWiNFO、Windows PCのデバイス詳細情報やCPU温度など、導入必須のフリーソフトの概要」にて抽出のシステム情報。クリックで拡大できます。
▼メモリはDDR4 8GB x 2の16GB、デュアルチャネルで動作しています。
▼メモリはA-Dataの8GB x 2。同社のメモリは国内販売においても販売されています。なお、前述のとおり、Web カメラを内蔵していることなどにより、MC560は外枠を外してメモリやSSDの換装を行うことはできません。
▲PCIe SSDの型番は「ESO512GYLCT-EP3-2L」とありますが、ブランド・製造元は不明です。ただし、MINISFORUMの上位機あるいは 以下の記事で実機レビューのUM450でも搭載されているSSDです。

開封、外観
続いて開封・外観について記載します。開封して まず感じたことは、想像よりもコンパクトであること。大雑把に言えば、通常のミニPCを縦置きにし、Web カメラを内蔵するスペースを縦に伸ばしたイメージです。
開封
▼ブラックを基調とした外箱です。写真では大きく見えますが、実測 187 x 137 x 134mmとコンパクトな外箱です。
▼裏側にスペックが掲載されています。中央に選択したオプションのシールがありますが(斜めになっていることはご愛嬌)、レビュー機のメモリは 8GB x 2の16GB、PCIe SSD 512GB
▼厚みのある保護材で保護されています。
▼仕様と接続方法の記載がメインとなる説明書、セットアップのしおりが付属しています。
▲▼以下の記事にも記載していますが、海外での販売がメインとなるPCでは(通常の場合、英語版 Windowsがセットされています)、Windows 11の初期設定で言語を日本語を選択した場合にも、キーボードのレイアウトは英語キーボードとなっています。このため、キーボードのレイアウト変更などの「しおり」が付属しています。

▼サイズ感を確認しやすいよう、マウスを並べて撮影しました。
▼パンチング状の部分も含めて樹脂製のボディです。
▼ハード面での付属品は、本体と比較すると大きなACアダプターと、HDMIコード。ACアダプターは、もちろん日本仕様です。
外観
前面の電源ボタンとスピーカー、上部のWeb カメラ、サイドと裏側のポート類の配置から縦置きで使用します。縦置きの省スペースでもあり、10.67 x 6.86 x 15.24cmのサイズよりもコンパクトに感じます。また、パンチング調の外枠など、ミニPCらしくない外枠のデザインはよいですね。
▼電源ボタンのある前面より。Web カメラのレンズ中央までの高さは 実測 143mmです。
▼電源オン時には、このようにブルーのLEDが点灯します。
▼こちらの上部の通風孔から内部の熱が排出されます。
▼Web カメラを拡大。
▼前面の電源ボタンのある側から見て左のサイドには、リセットホールを備えています。アルミパンチング板状の部分も含めて、全面樹脂製です。
▼こちらは右サイド。下側にイヤホンジャック、USB-A 3.2 Gen2ポート、PD / Alt対応のUSB Type-Cポートがあります。
▼ポート部分を拡大。後述していますが、ディスプレイが PD対応のUSB Type-C 映像入力ポートを備えている場合、PD / Alt対応のUSB Type-Cポートに接続することにより、ACアダプターやHDMIケーブルなしで、MC560に給電しつつの映像出力が可能です。
▲▼左サイドの全体像を、以下の「MINISFORUM UM450」と「Beelink SER5」を縦置きにして並べてみました。ざっくり言えば、MC560は Web カメラを収める分ほど高さがあるイメージです。


▼背面には USB-A、HDMI、有線LANポートがあります。スペース的に厳しいですが、サイドにあるPD / Alt モード対応のUSB Type-Cポートをディスプレイ接続することを考慮すると、これは背面に配置してほしかったです。
▼底面には上下のゴム製の台座、Web カメラを傾けるためのスタンドがあります。
▼樹脂製のスタンドを広げた様子。スタンドを開く際には やや硬いです。10°と傾斜は大きくないため、使用中に倒れる心配はありません。
ベンチマークスコア
「Geekbench 5」、「Geekbench 6」、「CINEBNECH R23」、「CystalDiskMark」のベンチマークスコアを掲載します。
比較対象は以下の記事にて実機レビューの、Ryzen 5 5560Uを搭載する「Beelink SER5」、Ryzen 5 4500Uを搭載する「Beelink UM450」です。


Geekbench 5
Geekbench 5は既に公式サイトからダウンロードできず、Geekbench 6に置き換わっていますが、比較対象のためにも Geekbench 5でベンチスコアを計測しました。
▼MC560 / Ryzen 5 5625Uのスコアは「シングルコア 1378、マルチコア 6118」。中央は Ryzen 5 5560Uを搭載する「Beelink SER5」、下はRyzen 5 4500Uを搭載する「Beelink UM450」のスコアです。
Ryzen 5 5625UとRyzen 5 5560Uは同世代の6コア12スレッドのために同水準のスコアと思いきや、意外と差が生じています。ただし、体感レスポンスは同程度です。
▼以下の記事に、これまでレビューしたPC、あるいは紹介の主だったPCのスコアを一覧化していますが、体感レスポンスに直結するシングルコアのスコアは、Core i7-1165G7と同水準です。

Geekbench 6
リリース間もない Geekbench 6であり、他のCPUのWeb サイトでの情報も少なく、私自身、手元にある多くのPCのスコアを計測できていないため、参考情報としての掲載です。
▲▼実機での計測スコアは「シングルコア 1714、マルチコア 6335」。以下の記事に掲載していますが、スコア判定の基準となるCPUが異なるため、Geekbench 5よりも高いスコアとなります。

CINEBENCH R23
CINEBENCH R23のスコアは「シングルコア 6693、マルチコア 1177」。
グラフの2つめのスコアは、Ryzen 5 5560Uを搭載する「Beelink SER5」ですが、Geekbench 5とは逆に Ryzen 5 5625Uの「MC560」よりも高くなっています。Geekbench 5とあわせて、ざっくり同水準です。
CrystalDiskMark
▲▼PCIe 3.0 x 4で動作しています。Readは2461MB/s、Writeは1945MB/sと、このクラスでは一般的なスコアです。
体感レスポンス
他のミドルレンジからハイエンド寄りのCPUを搭載するPCとほぼ同じコメントとなりますが、記事編集・画像編集、オフィスソフト、動画視聴などの私の普段使いでは、かなりキビキビと動作します。
- PCIe SSD、メモリ 16GBとあいまって、上記の私の普段使いでは 遅さを全く感じることなく、キビキビと動作します。
- 私のメイン使用のM2 Pro Mac miniと比較した場合にも、ごく稀に引っ掛かりを感じることがある程度の相違。
- PCIe SSDは特に高速な製品ではないものの、Windowsの起動や終了、大容量ソフトのインストールなど、実に快適です。
- エントリークラスのCPUでは、Windows アップデートのバックグラウンドプロセスが動作している場合には、レスポンスが極端にわるくなるのですが、本製品の場合にはレスポンスの大幅な悪化を感じず。
PD対応 USB Type-C Alt モード
「MC560」の特徴の一つとして、上の写真右側のPD(Power Delivery)・Alt モード対応のUSB Type-Cポートを備えています。
ディスプレイ側がPD対応のUSB Type-Cポートを備えており、Type-Cでの映像入力に対応している場合、MC560とディスプレイをケーブル一本で接続・動作させることができます。
以下の「Innocn 40インチ ウルトラワイドモニター」と接続したところ(USB Type-C 90Wに対応)、MC560に給電しつつ モニターへ映像出力でき、安定動作しています。HDMI ケーブル・ACアダプターを接続することなく、ケーブル1本で運用できるため、これは大きなメリットです。

▼こちらは実際に、PD・Alt モード対応のUSB Type-Cポート接続し、使用している様子。
▲▼中央の太いUSB-Aのケーブルは、以下のUSB 切替器を接続しています。

静音性
手元にあるAMD Ryzenを搭載する以下のPCは負荷をかけた際にも、CPUファンの音量は気にならないほどに静音です。
Beelink SER5 ミニPC 実機レビュー、AMD Ryzen 5 5560U / RAM 16GBを搭載しキビキビ動作、通常作業時には無音で作業効率もアップ
MINISFORUM UM450 実機レビュー、シリーズ エントリー構成ながらも十分に快適動作。負荷をかけてもほぼ無音の静音性
一方、「MC560」は全般的には静音であるものの、時おり やかましくない程度のファン音量が聞こえます。具体的には以下です。
- 多くの時間は、ほぼ無音、あるいは気にならないほどに静音。
- Windowsの起動直後は別にして、ベンチソフトなどで負荷をかけてない際にも、時々 ファン音が僅かに気になる程度に聞こえることもあり。これは数分間持続する程度となり、多くの方にとっては無視できる範囲と思います。
- ただし、以下の「CPU温度」で記載のとおり、CPU温度が高くなる傾向もあり、この場合には ファン音量を気にせず(最大の回転数でも やかましくない)、ファンコントロールを行うべきです。
CPU温度
下の画像は「HWiNFO(PCのストレステストなら「OCCT」、簡単操作でモニタリング機能も豊富」で計測のCPU温度です。
ベンチマーク測定で不可をかけた場合、あるいは通常利用の場合にも 80℃台となることもあり、夏場などは特に温度にケアした方がよさそうです。なお、ボディが高熱を帯びるなどの現象はありません。

▲▼上の記事で記載のファンコントロールソフトは、MC560で機能しているように思います(現在確認中)
Web カメラ
しばらく在宅勤務・オンライン会議を行っていないこともあり、Web カメラを使用中のスクショの掲載は割愛しましすが、MC560のWeb カメラのポイントとなるのが、Web カメラの高さ。Teamsで確認してみた画像や画角などのコメントは以下です。
- 私がメイン利用のディスプレイ(上の写真)の机からディスプレイ表示領域の高さは約10cm。上の写真のようにMC560が被ってしまいます。
- 上記により、Web カメラを使用しない場合にはディスプレイに被らない位置に設置し、Web カメラを使用する際のみ、中央、もしくは顔が映る範囲に設置するのがベスト。
- 中央に設置した場合、カメラの位置が低いために顔全体が表示されません。このため、スタンドを利用し角度をつけての使用となります。
- スタンドを利用した場合には、顔全体が表示されます。ただし、画角が広いため、部屋の広範囲が表示されることになります。
- 画質・周辺部の歪みなどは、5,000円前後で販売のWeb カメラと同水準、もしくは MC560のカメラが良好。また、明るさも十分なもの。
▼映像に強度のボカシを入れていますが、設定画面で確認中の一コマ。スタンドを利用のデフォルト設定では、顔の位置とサイズは以下のようになります。
スピーカー
3W x 2のスピーカーを搭載の「MC560」ですが、以下の記事で記載のモニターに付属のスピーカー、安価な真空管プリメインアンプ経由のスピーカー、その他 ノートPCのスピーカーと聞き比べてみました。
innocn 40インチ ウルトラワイドモニター 実機レビュー。明るさ、Macの色合いとの相性も抜群
PCのオーディオ環境改善に真空管プリメインアンプを購入。安価ながらも音量は期待以上、音質の広がりも体感
USB DAC レビュー、真空管プリメインアンプとの接続により PCの音質は大きく改善
▼聞き比べのコメントは以下です。
- 比較するのは酷ですが、音楽を聴く場合には 真空管プリメインアンプとDACの組み合わせがベスト
- MC560のスピーカーは、在宅勤務・オンライン会議の使用を想定してか、低音の迫力と高音の伸びなどは控えめ。YouTubeの声などは聴きとりやすいです。
- また、ノートPCやスマホにありがちなシャカシャカ音は抑えられています。
- 音量は大きく、YouTubeなどの動画の視聴では 音量を下げて使用しています。
▼スピーカー・マイク・上記のWeb カメラともに、PCの電源を入れると即認識します。
メモリ、SSDの換装は不可
「MC560」はベアボーンの販売がありませんが、MINISFORUM 公式ストアのQ&Aに以下の記載があります。
MC560はカメラを搭載しているため、無塵室中に設置する必要があります。お客様ご自身で分解・設置されますと、カメラ部に埃が入り込み、画質に影響を与える可能性があります。 そのため、MC560のベアボーンキット仕様を販売しません
以下の画像を見ると、上下の枠はツメで固定されているため「もしや、内部の構成を確認でき、メモリ・SSDを換装できるかも?」と思ったものの、ヘラなどを差し込むスペースもなく、破損のリスクを伴うため「換装不可」との判断です。
参考、日本語キーボードへのレイアウト変更方法
中国ブランドも含め、海外製のミニPC・PCでは、通常の場合、Windows 11 英語版がプレインストールされています。初期設定で日本語を選んだ場合にも英語キーボードの設定になっているため、@の位置など、日本キーボードとは異なる配置となっています。これを初期不良と勘違いする方もいらっしゃるのですが、以下の記事に記載の方法で、簡単に日本語キーボードのレイアウトへと変更することができます。

▼なお、こちらは私のおすすめのWindows 11の初期設定です。

まとめ
AMD Ryzen 5 5625U、メモリ 16GB(32GB版もあり)、PCIe SSD 512GB搭載と基本スペックが高いうえに、Web カメラとマイク、スピーカーを内蔵し、周辺機器(Web カメラ、スピーカーフォン)を別途追加することなく、在宅勤務・オンライン会議に即利用できることが特徴の「MINISFORUM MC560」。あらためて使用感などを整理すると以下となります。なお、Web カメラ・スピーカー・マイクの全般的な使用感は、在宅勤務・オンライン会議を実施後に追記します。
- 樹脂製の筐体となりますが、パンチング調の外枠など、ミニPCらしくないデザインはよいです。
- 縦置きでもあり、サイズよりもコンパクトに思えます。
- 基本スペックが高いため、普段使いではキビキビと動作します。
- CPUファンは、多くの時間帯はほぼ無音ですが、時おり 気にならないほどのファン音が聞こえることがあります。
- 上記のファン音(時おり大きくなる)と関連して、CPU温度は高くなる傾向に。このため、ファンコントロールの導入がよさそうです。
- スピーカーはオンライン会議を意識したスピーカー・チューニングによるものか、低音の迫力・高音の明瞭さは不足気味だが、動画での声は モニターやノートPCに内蔵のスピーカーより聞き取りやすい。
- Web カメラまでの高さがあるため、モニターと本体が被ってしまい、かつ顔全体が表示されません。このため、Web カメラを使用時にはスタンドの利用が前提で、サイドからの撮影、モニターの高さを一時的に高くするなどの対応が必要。
- Web カメラの画質・明るさは良好です(マイクも含めたオンライン会議での使用感は、別途追記します)。
- PD / Alt モード対応のUSB Type-C ポートは、ディスプレイが対応している場合には、ケーブル1本で MC560への給電、モニターへの映像出力ができ、すこぶる便利です。
- 本体の外枠を外せず(Web カメラ内蔵のため、その仕様になっている)、メモリ・SSDの換装はできません。
▼メモリ 16GB / SSD 512GB版の 2023年4月16日現在の公式ストアの価格は49,580円。同スペックで PD / Alt モード対応の「UM560」の価格が61,500円であり(ただし、UM560は 65W GaN電源アダプターが付属)、「MC560」のコスパの高さが際立ちます。